【図解でわかる】デフレーションとは?デフレの仕組みや影響をわかりやすく解説!

【図解でわかる】デフレーションとは?デフレの仕組みや影響をわかりやすく解説! 経済学

ニュースで「デフレが続いている」「デフレ脱却を目指す」という言葉を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか?

特に日本はバブル崩壊後、20〜30年間もの間デフレの状態だったので、経済に詳しくない方でも1度は聞いたことがあるかと思います。

でも、そもそも「デフレーション(Deflation)」とは何のことなのでしょうか?

今回は、「デフレーションとはどのような現象なのか」また、「私たちの生活にどのような影響を与えるのか」をわかりやすく解説していきます!

デフレーションとは?

デフレーション(Deflation)とは、一般的な物価水準が下がり続ける現象のことを指します。

デフレーションのイメージ画像

1年や2年の一時的な値下がりではなく、長期間にわたって値段が下がり続けるのがポイントです。

インフレの時とは反対に「物価が下がる=お金の価値が上がる」ことを意味します。

物価が上がり続けるインフレと比べて、デフレは物価が下がり続けるので

「デフレになると生活が豊かになりそう!」

と考える方もいるかもしれません。

実際にデフレが私たちの生活にどのような影響を与えるのでしょうか?

デフレはなぜ起こる?

デフレーションは、主に次のような理由で起こります。

デフレーションが起こる原因
  • 需要の減少(モノが売れない)
  • モノやサービスの供給が過剰になる(モノが余る)
  • 将来への不安(心理的要因)

① 需要の減少(モノが売れない)

デフレはまず、景気が悪化して人々が「お金を使わなくなる」ことから始まります。

需要減少のデフレの解説画像

このように、みんなの消費が落ち込んでしまうとお店の商品が売れ残るようになります。

食品の場合は賞味期限がありますし、その他の商品の場合であっても在庫量に限界があるので、お客さんに買ってもらうために値段を下げることになります。

その結果、物価全体が下がってしまいます。

需要の減少が物価を下げる仕組みを需要曲線・供給曲線を使って確認してみましょう!

需要曲線・供給曲線で見る需要減少のデフレの画像

このように、給料の減少や増税などの需要の減少は需要曲線を左方向へ移動させるので、その結果均衡点は下がり物価が下がります。

物価が下がると企業の収益が下がり業績が悪化していくので、労働者の給料が上がらなくなったり新規雇用の停止が起きたりと、経済に悪影響を与えます。

② モノやサービスの供給が過剰になる(モノが余る)

生産技術の向上などで商品が市場にあふれることも、デフレの要因になります。

供給過剰のデフレの解説画像

上の画像のように、生産技術の向上によってドーナツの生産量が増えると「需要<供給」になり商品が余ってしまうので、価格が下がります。

また、実際にはドーナツを販売する会社の数はたくさんあり、それぞれの生産技術が向上して市場に同じ製品が増えるので、企業間で価格競争が起きてしまいます。

その結果、企業は値下げを余儀なくされます。

次に、モノやサービスの供給の過剰が物価を下げる仕組みを需要曲線・供給曲線を使って確認してみましょう!

需要曲線・供給曲線で見る供給過剰のデフレの画像

このように、供給量が増える場合、供給曲線を右方向へ移動させるので均衡点が下がり物価が下がります。

③ 将来への不安(心理的要因)

経済が悪化し不景気になると「どうせ給料は上がらない」「将来が不安だから貯金しよう」と考える人が増え、消費が落ち込みます。

消費が落ち込むことで「① 需要の減少」と同じ現象が発生してしまい、企業の売上が減り価格が下落してしまいます。

デフレが起こるとどうなる?

物価が上がり続けるインフレに対して、デフレは物価が下がり続けるので「値段が下がるなら良いことでは?」と思うかもしれません。

また、「物価が下がる→経済が刺激され景気が良くなる」ように感じるかもしれませんが、デフレは長期的に見ると次のような悪循環を引き起こします。

デフレが起こるとどうなる?
  • 企業の利益が減る
  • 給料が上がらない・雇用が不安定になる
  • 投資・経済活動が停滞する

① 企業の利益が減る

通常時であれば物価が下がると売り上げは伸びますが、デフレ時の場合、物価が下がっても売り上げは伸びません。(「物価が下がる=企業の収益が減る」)

値段を下げても商品はなかなか売れないので、企業は設備投資の縮小や商品の減産、賃金などの費用の削減を行います。

賃金の減少、さらにはリストラが起きてしまうと、さらに消費が落ち込んでいきデフレが加速します。

② 給料が上がらない・雇用が不安定になる

企業の業績が悪化すると、費用をなるべく少なくするために正社員の採用が減少します。

また、現在正社員であっても賃金が上がりにくく、さらにリストラの可能性もあるので、みんながもしもの時のためにとお金を使わなくなります。

結果として消費が減り、デフレが加速するという悪循環が起きます。

③ 投資・経済活動が停滞する

デフレの状態では価格が常に下がり続けるので「しばらくすると安くなるから、今の価格で購入すると損してしまう」と考える人が増え、個人も企業もお金を使わなくなります。

また、デフレは「物価が下がる=お金の価値が上がる」状態を意味するので、デフレ時に銀行から資金を借り入れている場合、企業は返済するコスト以上の負担を負ってしまい、さらに経済が悪化してしまいます。

これを「負債デフレ」と呼びます。

このように、デフレでは「買い控え」が起こるだけでなく、企業の資金繰りが難しくなってしまい、企業の業績が悪化してデフレへと進んでいきます。

デフレから抜け出せなくなる「デフレスパイラル」とは?

デフレスパイラルとは、「物価が下がる → 経済が悪化する → さらに物価が下がる」
のように、物価の下落が経済全体の悪循環を引き起こす現象です。

デフレスパイラルの解説画像

モノの値段が下がると、企業の売上や利益が減少し、給料や雇用が抑えられます。

すると人々は将来への不安から消費を控え、さらに需要が減少。企業は売れない商品を処分するために値下げを続け、物価が一段と下がります。

こうして「物価下落 → 収入減少 → 消費減少 → 物価下落」という負の連鎖が続くのです。結果として、企業倒産や失業率の上昇、経済成長の停滞を招きます。

このスパイラルを防ぐには、政府が財政支出を増やしたり、日銀が金利を下げて資金を流通させたりするなど、景気を刺激して消費と投資を活発化させる政策が必要です。

なぜ日本はデフレになったの?

日本は1990年頃にバブルが崩壊して以降、20〜30年間デフレ状態が続いています。

でも、なぜバブルが崩壊しただけでこれほどまで長いデフレが続いているのでしょうか?

ここでは、日本がデフレになった経緯を解説します!

1980年代にプラザ合意の影響を受けて円高になり輸出に頼る日本はダメージを受け、円高対策として日本銀行は金利を下げ、企業の海外進出などの設備投資の資金を借りやすくしました。

その後景気は回復しましたが、金利が下がったままだったので企業や個人は株や不動産などにこぞって投資をし、株価と不動産価格が急騰する「バブル」が発生しました。

バブル期は株や不動産に投資をするだけで莫大な利益を得ることができたので、企業は土多額の借金をして投資を行い、従業員の給料も増えていきました。

しかし、急激な不動産価格の高騰によりさまざまな社会問題が発生したため、1989年に日本銀行は過熱を抑えるために金利を引き上げました。

その結果、1990年前後に株価と地価が大暴落してしまい(バブルの崩壊)、企業や個人は巨額の負債を抱え、銀行も「不良債権(返済不能な貸出)」を大量に抱えることになります。

バブル崩壊後、

  • 企業・・・「借金を減らす」ことを優先し、投資や採用を控える。
  • 銀行・・・融資を控える→経済全体が「お金が回らない」状態になる。

といったように、社会全体が消費を控える状況になったため、「給料が上がらない → 消費が減る → さらに物価が下がる」というデフレスパイラルに陥ってしまいました。

さらに、1990年後半にはアジア通貨危機や山一證券の破綻などもあり、企業や家計の不安心理はさらに悪化し、日本経済は「お金を借りない・使わない」デフレの社会になってしまいました。

政府や日本銀行は、アベノミクスなど何度もデフレの脱却を試みましたが、一時的なインフレ傾向に留まり2020年以降もデフレ経済が続いています。(2022年以降、物価高などインフレ傾向ではあるものの、政府の見解としてはデフレ脱却には至っていません。)

デフレへの対策とは?

インフレと同様、適度なデフレは経済にとって悪いものではありませんが、デフレにおちいってしまわないように中央銀行や政府は日々対策をしています。

ここでは、デフレに対する中央銀行や政府の役割を解説していきます。

中央銀行の役割

デフレが進んでいくと、景気が悪くなっていき労働者の収入の低下や解雇が増え経済が悪くなっていきます。

そのコントロールを担うのが、中央銀行です。

中央銀行は金利を変動することで経済の安定を図ります。

デフレを抑制し経済を刺激したいとき
  • 金利を下げて借り入れコストを低くし、借金や設備投資を促す
  • お金の流通を増やし、需要を高める
デフレを抑制する手段のイメージ画像

デフレを抑えたい場合、中央銀行は金利を下げて借り入れコストを低くすることで企業や個人がお金を借りやすくさせます。その結果、企業の設備投資や個人の消費量が増え、経済が活性化します。

また、通貨の流通量を増やすことで自由に使えるお金が増えるので、消費量が多くなります。

政府の役割

デフレ時における政府の役割は、減税や政府支出の増加など需要や通貨の流通を増やすことです。

中央銀行は金利を下げることで設備投資や消費を促しますが、政府は税金を下げることで消費を促します。

また、公共事業などの政府支出を増やすことで労働者への仕事を作り、市場に出回るお金を増やします。

デフレの反対「インフレーション」との比較

デフレの反対が「インフレーション(インフレ)」です。

インフレは、物価が上がり続ける状態のことで、企業の利益や賃金が上がる一方で、生活コストも上昇します。

比較項目インフレーションデフレーション
物価上がる下がる
お金の価値下がる上がる
景気活発化(過熱すると危険)停滞・縮小
給料上がりやすい(初期)下がりやすい
家計への影響生活費の上昇
資産(現金)の価値減少
物価安いが給料減少

このように、インフレとデフレは表裏一体の関係なので、どちらかを理解すると自然ともう片方も理解することができます。

まとめ

デフレ経済とは、物価の下落が続き人々が消費を控えることで経済全体が縮小していく現象です。

物価が下がることは一見良いことのように思えますが、実際には企業の利益が減少し、賃金が上がらず、景気が回復しにくくなるという悪循環を生み出します。

日本では1990年代のバブル崩壊をきっかけに、企業の投資や個人の消費が冷え込み、長期にわたるデフレが続き経済が停滞したので、デフレの恐ろしさをイメージしやすいかと思います。

デフレから脱却するには、政府と日銀が連携し金利の引き下げや政府支出政策を行うことが効果的だとされていますが、日本の場合、超低金利政策(マイナス金利)を行ってもデフレから脱却できていません。

近年、急激な円安や物価高の影響が大きいので「なぜ日本は金利を上げて円高にしようとしないの?」と疑問に持つ方も多いかもしれませんが、長期間のデフレ経済を経験していることも影響しています。

このように、経済の基礎や経済の歴史を知ることで現在の社会や経済を幅広い視野で見ることができるようになります。

インフレ・デフレの知識を持つと、今までとは違った感覚でニュースを見ることができるので、ぜひ経済の勉強をして新聞やニュースを確認してみてはいかがでしょうか!

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