インフレ時の物価高に対して賃金の増加が追いついていない場合、国民の金銭的な余裕が無くなって消費が落ち込んでしまいますよね。
このような場合、「消費税を減税すべきかどうか」 という議論がテレビや新聞、SNSで厚くかわされています。
「物価高なら消費税を無くせば解決するんじゃないの?」
このように、消費税が無くなれば消費が活発になって経済が回るように思えますが、実は減税政策によって財政が悪化したり経済が悪くなったりする可能性があります。
今回は、「経済学から見る消費税減税」と「減税のメリット・デメリット」を分かりやすく解説します。
そもそも消費税とは?
消費税とは、商品やサービスを購入したときに広く一律で課される税金です。

スーパーでの買い物、外食、家電の購入など日常のほとんどの取引にかかっているのでほとんどの人にとって1番身近に感じる税金です。買い物の際に消費税込みで支払うので「税金を払っている」と感じますが、実際に納税するのは店や企業で、消費者から預かった税金を国に納める仕組みになっています。
消費税の特徴は「特定の人ではなく、消費全体を対象に公平に集める税」である点です。
消費税は景気に左右されにくく安定した財源になる一方、所得の低い人ほど負担感が重くなりやすいという側面もあるので、軽減税率や給付などで影響を和らげる政策が取られることもあります。
需要曲線・供給曲線から見る消費税
消費税が10%→0%へ下がった場合、「買い物をするときに10%分安くなる」と思うかもしれませんが、実際は消費税が無くなった分安くなるわけではありません。
その理由を、需要曲線・供給曲線を使って確認してみましょう。

このように、グラフを見てみると増税した分価格が増加していないことがわかりますよね。これは消費税は消費者側とお店側の両者負担になっているためです。
さらに、このグラフに価格の弾力性が加わってきます。

弾力性が小さいもの(食料品や日用品)は、消費税によって価格が上がってしまうと消費が落ち込み売り上げが下がってしまうので、お店側も消費税を負担しています。

一方、弾力性が大きいもの(贅沢品)は、消費税によって価格が上昇しても消費が落ち込むことはないので、お客側が消費税の大部分を負担しています。
ここで、もし消費税が0%になった場合を考えてみましょう。
弾力性が小さい商品はお客側の負担が少なくお店側の負担が大きいので、消費税が0%になっても価格がそこまで下がりません。また、お店側が売上のために多少値を下げていた場合(税込で500円以下になるように調整するなど)、消費税がなくなることで値上げ(正規価格へ戻す)が行われる可能性があります。
一方で、弾力性が大きい商品はお客側が消費税の大部分を負担しているので、消費税が0%になると価格が大きく下がります。
このことから、消費税の減税は所得が少ない人の負担を減らす一方で、贅沢品を頻繁に購入する富裕層が恩恵を受ける一面も持ち合わせています。
期間限定の消費税減税は効果がある?
先ほどのグラフのように消費税は国の税収の大部分を占めるので、期間限定や特定商品のみで減税政策を訴える政治家が多いですよね。
期間限定の消費税減税には「経済に刺激を与える」といったメリットや「税収が減少する」といったデメリットがあります。
以下で詳しくみていきましょう。
期間限定の消費税減税のメリット
経済に刺激を与える
期間限定であっても、消費税がなくなると「税金がない分お得に買い物ができる!」と購買意欲が高まり経済に刺激を与えます。
経済が停滞している時に消費税減税を行うことで景気が回復するきっかけになる事もあるので、状況次第ではとても効果があるといえます。
価格が下がる可能性がある
消費税が減税される事で、一般的には価格が下がり消費が伸びます。
ただ、インフレのように物価が上がり続けている場合やお店側が税負担している場合は減税されても価格がそこまで下がらない可能性があります。
期間限定の消費税減税のデメリット
減税期間が終わると消費が落ち込む
期間限定の減税の場合、期間が終わると消費税が元に戻ってしまいます。
過去を振り返ってみると、日本は消費税が上がるタイミングで消費が落ち込んでしまっていますが、減税期間が終わって消費税が0%から8〜10%いきなり上がると経済に打撃を与える可能性があります。
価格が下がらない可能性がある
「消費税が下がる=価格が下がる」というイメージがありますが、必ずしも価格が下がるとは限りません。
消費税が0%になると、「価格を表示するタグの作り直し」などお店側にとって金銭的な負担が大きくなってしまい、結果消費税が下がっても価格が据え置きになる事例があります。
また、インフレ時の消費税減税を行う場合、消費税が0%になっても物価が上がり続けるので減税効果を実感できない可能性があります。
通貨安になって物価が上がる可能性がある
財源に問題がある中で減税政策を行うと財政悪化のリスクがあります。
このリスクを嫌って投資家が通貨を売ってしまうことで通貨安になってしまい、輸入品の価格がさらに高くなってしまいます。
消費税ではありませんが、2022年にイギリスのトラス首相が大規模な減税政策を行った結果、ポンドの急落やイギリス国債の利回りの急騰が起こってしまい、急遽イングランド銀行が長期国債の買い入れを行うなど大きな問題になりました。(トラス・ショック)
このように、政府の行う政策によって信頼が揺らいだ場合、通貨安・金利急騰のリスクがあります。
海外では消費税が減税された事例もある
消費税(付加価値税)は「一度上げたら下げにくい税金」といわれており、実際に日本では増税はあっても減税されたことがありません。
ただ、実は海外では景気対策や物価対策として減税が行われた例もあります。
特に目立つのは、「深刻な経済危機が起きたとき」です。
不況時の減税(リーマンショック・コロナ危機)
2008年に起こった世界的な金融危機であるリーマンショックでは、景気の急激な悪化を受けて、イギリスなどいくつかの国が消費税(VAT)の引き下げを実施しました。
この消費税の引き下げは、「景気が悪くなる→消費が落ち込む→さらに景気が悪くなる」という悪循環を避けるために行われたと考えられます。
リーマンショックで行われた減税政策の流れは2020年のコロナ危機でも見られ、ドイツやイギリスなど多くのEU諸国が期間限定の消費税減税を実施しました。
インフレ対策としての減税
一方で、物価高(インフレ)対策として減税が行われた例もあります。
近年では、
- エネルギー価格の高騰
- 食品価格の上昇
を背景に、スペインやポーランドなどが食品や生活必需品のVATを減税しました。
なぜ「一時的な減税」が多いの?
日本の消費税減税政策案や海外の事例を見ると、「期間限定」や「対象限定」の減税が多いことに気づきますよね。
これは、
- 税収減による財政悪化
- 恒久減税のリスク
を避けるためだと考えられます。
消費税は国家の税収の大部分を占めているので、消費税を長期間下げ続けると国家財政が悪化してしまいます。
つまり、消費税の減税はあくまで「緊急避難的な政策」としての減税という位置づけとなっています。
日本は消費税減税すべき?
海外の消費税減税の事例を確認してきましたが、日本は消費税の減税をするべきなのでしょうか?
この問題は非常に難しく、専門家の中でも賛否が分かれています。
- 物価高に対して家計の負担が軽減する
- 景気対策として即効性がある
- 2年間で約10兆円の減収
- 効果が限定的
- 金融市場への影響
近年物価高に苦しんでいる国民の負担軽減を考えると減税は効果的である一方で、大幅な減収や金融市場への影響など反対される要素を大きく含んでいます。
また、消費税減税を行った国の中には「価格のタグの修正に大きな費用が掛かってしまう」という理由で価格が据え置きのままだったという事例や、自炊時の消費税(0%)と外食の消費税(元の税率のまま)に差が出すぎて外食産業が大ダメージを受けるという事例があります。
なので、消費税を減税する前にこれらの問題に対する対策を徹底する必要があります。
まとめ:消費税減税は必ずしも価格が下がる訳ではない
消費税減税は、以下のようにメリット・デメリットがはっきりと分かれています。
- 個人消費を直接刺激する
- 物価高対策として即効性がある
- 税収減による財政議論が必要
- 市場不安を招く可能性がある→通貨安になって輸入品価格が上がる
消費税の減税は一見とてもお得に感じるかもしれませんが、需要曲線・供給曲線を見てみると必ずしも消費税分安くなるとは限りません。
さらに、場合によっては通貨安になって輸入品の価格がさらに上昇してしまう可能性があります。
このように、消費税の減税はプラスの面とマイナスの面どちらも持ち合わせているので、景気や財政状況によって効果が異なります。


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