経済学、特に需要曲線・供給曲線において「弾力性」というワードが登場します。
弾力と聞くと「肌の弾力」「スーパーボールの弾力」のように
「(モノなどに対して)押し込んでも元に戻る、弾む」
といったイメージを持つ人が多いのではないでしょうか?
しかし、経済学の場合、「価格」という実態がないもの対して“弾力性”が使われるので、初めて経済に触れる人にとってはわかりにくい表現となっています。
この弾力性は、企業の価格設定(マーケティング)で重要になるだけでなく、需要・供給曲線のグラフの傾きや、マクロ経済学のIS-LM曲線の傾きを決定する非常に重要な要素です。
今回は、価格の弾力性の基本から、グラフの傾きとの関係、そして財政・金融政策の効果を左右するIS-LM曲線への応用までを、初心者向けにわかりやすく解説します!
価格の弾力性とは?

まずは、価格の弾力性について解説していきます。
「価格の弾力性」というのは、
ある商品の値段が上がったり下がったりした時に、消費者の需要量や生産者の供給量がどのくらい変化するのかを示す指標
です。
もっと簡単にいうと、
「モノの値段が変わったら、人々の買う量・売る量はどのくらい影響を受けるのか?」
を数値で表したものです。
価格の変化で影響を受ける場合を弾力的、価格の変化にあまり影響を受けない場合を非弾力的といいます。
需要の価格弾力性について
需要の価格弾力性は、価格の変化に対して需要量がどれだけ反応するかを測る尺度です。

価格の変化に対して需要量が大きく反応するとき、その財の需要は弾力的であり、価格の変化に対して需要量があまり変化しないとき、その財の需要は非弾力的となります。
- 弾力性が1よりも大きい → 需要は弾力的
- 弾力性が1より小さい → 需要は非弾力的
需要の価格弾力性の測定方法は、需要量の変化率を価格の変化率で割って算出されます。

実際にどのように計算されるのか、トマトを使って具体的に解説していきます。

1個100円のトマトが110円に値上げした場合、価格の変化率は10%になります。
トマトの価格が10%値上げされたので、消費者はトマトの購入量が下がってしまいます。

今回の場合、値上げによって10個買われるはずのトマトが8個しか買われなくなりました。
この時の需要の変化率は20%になります。

価格弾力性の公式に当てはめてみると、トマトの価格弾力性は2になりました。
弾力性は1より大きいと「弾力性が大きい」となるので、今回のトマトは弾力性が高いことがわかります。
この場合、消費者はトマトの購入を控えて他の安い野菜を購入します。
需要の価格弾力性が大きい場合
まずは、価格の弾力性が大きい場合について見ていきましょう!

弾力性が大きい場合、需要曲線の傾きはなだらかになります。
需要曲線がなだらかな場合、すなわち弾力性が大きい場合に値段が上がったらどのような変化があるのかグラフで確認しましょう!
グラフを見てみると、少し値段が上がるだけで需要が大きく減ってしまうことが分かります。
これは、消費者が価格変化に敏感であることを表しており、消費者はその商品の値段が少し上がるだけで購入するのをやめたり、代わりの商品を購入するようになります。
テーマパークのチケットやブランド品などの趣向・ぜいたく品は、値段が下がったら多くの人が購入しようと集まりますが、反対に値段が上がったら購入したい人は減り、他の安いものに人が流れます。
- 消費者が価格の変化に対して敏感
- 価格が上がった場合、消費者は購入を控えたり他の商品に流れる
- 価格が下がった場合、消費者はこぞって買い求める
- 需要の弾力性が大きいものとして、ぜいたく品や趣向品などが挙げられる
需要の価格弾力性が小さい(非弾力的)場合
次に、価格の弾力性が小さい場合について見ていきましょう!

弾力性が小さい場合、需要曲線の傾きは急になります。
需要曲線が急な場合、すなわち弾力性が小さい場合、値段が上がったらどのような変化があるのかグラフで確認しましょう!
グラフを見てみると、値段が上がっても需要がそこまで減少しないことが分かります。
これは、消費者が価格変化にあまり反応しないことを表しており、消費者はその商品の値段が上がっても購入をやめることがありません。
お米などの主食や電気・水道などの必需品は、値段が上がったからといって他の代替手段があるわけではないので需要はそこまで下がらず、反対に値段が安くなったからといって需要はそこまで大きくなりません。
以下の記事では農作物と需要曲線・供給曲線や価格弾力性についての解説をしているので、ぜひ確認してみてください!
- 消費者は価格の変化にあまり反応しない
- 価格が上昇しても、消費者はその商品を買い続ける
- 需要の価格弾力性が小さいものとして、生活必需品(お米などの食料品)や代わりのものが少ないもの(電力や水道)が挙げられる
供給の価格弾力性について
供給の価格弾力性は、価格の変化に対して供給量がどれだけ反応するかを測る尺度です。

価格の変化に対して供給量が大きく反応するとき、その財の供給は弾力的であり、価格の変化に対して供給量があまり変化しないとき、その財の供給は非弾力的となります。
- 弾力性が1よりも大きい → 供給は弾力的
- 弾力性が1より小さい → 供給は非弾力的
供給の価格弾力性の測定方法は、供給量の変化率を価格の変化率で割って算出されます。

今回もトマトを使って解説していきましょう!

1個100円で販売されていたトマトが、110円に値上げされました。
この時の価格の変化率は10%になります。

生産者目線(供給側)に立つと、1個あたりの販売価格が10%増加したので「利益が出るトマトをたくさん作りたい」と考えますよね。
そこで、10個生産していたトマトを12個生産するようになりました。
この時、供給量の変化率は20%になります。

価格弾力性の公式に当てはめてみると、トマトの価格弾力性は2になりました。
弾力性は1より大きいと「弾力性が大きい」となるので、今回のトマトは弾力性が高いことがわかります。
この場合、生産者は他の野菜よりもトマトを優先して生産します。
供給の価格弾力性が大きい場合
まずは、価格の弾力性が大きい場合について見ていきましょう!

弾力性が大きい場合、供給曲線の傾きはなだらかになります。
供給曲線がなだらかな場合、すなわち供給の弾力性が大きい場合、値段が上がったらどのような変化があるのかグラフで確認しましょう!
グラフを見てみると、少し値段が上がると供給が大きく増加することが分かります。
これは、生産者が価格変化に敏感であることを表しており、生産者は製品の値段が少し上がると供給量を増やします。
- 生産者が価格の変化に対して敏感
- 価格が上がった場合、生産者はすぐに生産量を増やす
- 価格が下がった場合、生産者はすぐに生産量を減らす
- 供給の弾力性が大きいものとして、衣類など資源が豊富で生産が比較的容易であるものが挙げられる
供給の価格弾力性が小さい場合
次に、価格の弾力性が小さい場合について見ていきましょう!

弾力性が小さい場合、供給曲線の傾きは急になります。
供給曲線が急な場合、すなわち弾力性が小さい場合、値段が上がったらどのような変化があるのかグラフで確認しましょう!
グラフを見てみると、値段が上がっても供給はあまり増加しないことが分かります。
これは、生産者が価格変化にあまり反応しないことを表しており、生産者は商品の値段が上がってもあまり供給を増やしません。
- 生産者は価格の変化にあまり反応しない
- 季節の農作物や魚類は供給量を調節できないので非弾力的
- 農業、漁業のほかに不動産やコンサートなども非弾力的
IS-LM曲線と弾力性
ここまでは1つの商品(ミクロ経済学)の話でしたが、この「弾力性とグラフの傾き」の法則は、国全体の経済を分析するIS-LM曲線(マクロ経済学)でも全く同じように適用されます。
むしろ、IS-LM曲線の形を決めている正体が、この「弾力性」です。
以下で詳しくみていきましょう!
- IS曲線の傾きを決める「投資の利子弾力性」
- LM曲線の傾きを決める「貨幣需要の利子弾力性」
- 政策の効果が「傾き」で変わる
IS曲線の傾きを決める「投資の利子弾力性」
IS曲線(財市場の均衡)の傾きは、「投資の利子弾力性」によって決まります。
これは、
「金利(利子率)が下がったときに、企業がどれくらい敏感に『それなら銀行でお金を借りて工場を建てよう!(設備投資)』と反応するか」
という度合いです。
・投資の利子弾力性が大きい(企業が金利に敏感):

少し金利が下がるだけで投資が爆発的に増え、国民所得(Y)が大きく増加します。
そのため、IS曲線は緩やか(平坦)になります。
・投資の利子弾力性が小さい(企業が金利に鈍感):

「金利がいくら安くても、景気が不安だから投資しない」という状態です。
金利が下がっても国民所得は増えないため、IS曲線は急(垂直に近い)になります。
LM曲線の傾きを決める「貨幣需要の利子弾力性」
LM曲線(貨幣市場の均衡)の傾きは、「貨幣需要の利子弾力性」によって決まります。
これは、
「金利が変わったときに、人々がどれくらい『銀行に預けずに現金として手元に置いておこう』という気持ちを変化させるか」
という度合いです。
・弾力性が大きい(金利に敏感):

人々が現金を手放す・抱え込む反応が大きいため、LM曲線は緩やか(平坦)になります。
・弾力性が小さい(金利に鈍感):

金利がどうなろうと一定の現金を持とうとするため、LM曲線は急(垂直に近い)になります。
政策の効果が「傾き」で変わる
なぜこれが重要かというと、
IS-LM曲線の傾き(弾力性)によって、政府の財政政策(公共事業など)や、中央銀行の金融政策(お金の供給増)の効果が全く変わってしまう
からです。
たとえば、企業が金利に鈍感で「IS曲線が急(垂直)」になっている不景気な状態を想像してください。

このとき、中央銀行がいくら金融緩和をして金利を下げても(LM曲線を右へシフトさせても)、IS曲線が縦に壁のように立っているため、交点(国民所得)は右へ伸びず、景気は全く良くなりません。
逆にこの場合は、政府が直接お金を使う財政政策(IS曲線を右へシフトさせる)を行うことで、国民所得が一気に増えて景気が刺激されます。

このように、
「今の経済はどこが弾力的で、どこが鈍感なのか?」
を見極めることが、正しい経済政策を打つために重要になります。
まとめ
いかがでしたでしょうか!
価格の弾力性は、「値段が変わったときの反応の大きさ」を示すシンプルな概念ですが、経済のあらゆるグラフの形を決定づける強力なルールです。
- 弾力性とは: 価格の変化に対する需要・供給の変化の敏感さ。
- グラフの傾き: 傾きが「緩やか」なら弾力性が大きく(敏感)、「急」なら弾力性が小さい(鈍感)。
- IS-LM曲線への応用: 投資や貨幣需要の「金利に対する弾力性」が曲線の傾きを決め、財政・金融政策の効き目の強さを左右する。
| 弾力性 | 特徴 | 具体例 | なぜそうなるのか? |
| 大きい(>1) | 価格が少し変わるだけで、需要が大きく変わる | 宝飾品、高級車、娯楽費、他社に似た製品があるモノ | 買わなくても生活に困らない(贅沢品)ため、高くなったらすぐに買うのをやめるから。また、代わりの品(代替品)に乗り換えやすいため。 |
| 小さい(<1) | 価格が大きく変わっても、需要はあまり変わらない | お米、塩、水、電気、医薬品、タバコなど | 生きていくために必要不可欠(必需品)であり、高くても買わざるを得ないから。代わりになるモノが少ないため。 |
弾力性は経済を学ぶ上で非常に重要になるので、ぜひマスターしてみてください!










コメント