「統計学」や「金融」と聞くと難解な数式を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか?
特に投資の世界では「リスク」や「リターン」という言葉が飛び交いますが、これらが一体何なのかを答えられる人は意外と多くありません。
実は、投資における最重要キーワードである「リスクとリターン」は、中学校や高校の数学で少しだけ触れた「平均」と「分散」という統計学の基礎知識が基本になっています。
今回は、「平均」と「分散」を使った投資の判断に役立つ統計学とはなんなのか、わかりやすく解説します。
なぜ投資や金融に「統計学」が必要?
投資は「当たるか当たらないかのギャンブル」のように感じている人もいるかもしれませんが、必ずしもギャンブルという訳ではありません。
不確実な未来に対して、過去のデータから
「どのような結果になりやすいか」
「最悪の場合、どの程度の損になるのか」
を予測して、合理的な判断を下す確率のゲームのようなものです。
ここで活躍するのが統計学です。
日々の株価や為替の動きなどの膨大な金融データは、ただ眺めているだけでは意味不明な数字の羅列にすぎませんが、統計学というフィルターを通すことで、「データの中心(平均)」と「データの散らばり具合(分散)」という、極めて重要な2つが見えてきます。
データの中心を知る「平均」とは
まずは、誰にでも馴染みのある「平均」について解説します。
統計学における平均とは、「集めたすべての値を足して、その個数で割った値」のことです。
金融や投資の世界では、この平均がそのまま「期待収益率(リターン)」を意味します。
たとえば、あなたが金融商品Aと金融商品B、どちらかに投資するとします。
この2つの金融商品の過去3年間の運用成績(収益率)を見てみましょう。
- 金融商品A:1年目 +5%、2年目 +5%、3年目 +5%
- 金融商品B:1年目 +20%、2年目 -10%、3年目 +5%
計算してみると、どちらも3年間の平均リターンは「+5%」になりますね。
このデータを見て 「平均が同じならどっちを買っても同じかも」と思うかもしれません。
しかし、商品Aは毎年安定して5%ずつ増えていく一方で、商品Bは20%も儲かって大喜びした翌年に、10%のマイナスを叩き出すなど安定していません。
実際に投資をするなら、金融商品Bよりも金融商品Aの方が安全ですよね。
つまり、「平均」だけではデータに隠された「ブレ」を見落としてしまうので、リスクが大きい選択をとってしまう可能性があります。
ここで登場するのが、もう一つの主役「分散」です。
投資の「リスク」の正体は「分散」⁉︎
日常会話で「リスク」というと、「危険」や「損失」といったネガティブな意味で使われますよね。
しかし、金融や統計学の世界におけるリスクの定義は全く異なります。
金融用語としてのリスクとは「結果の不確実性(ブレの大きさ)」のことです。
上にブレて大儲けする可能性も下にブレて大損する可能性も含めて、平均からどれくらい散らばっているかを示します。
そして、この「データの散らばり具合」を数値化したものこそが、統計学における「分散(ぶんさん)」です。
教科書には「分散とは、各データと平均値との差(偏差)を2乗したものの平均である」と書かれています。
少し難しく聞こえますが、先ほどのふたつの商品を数字で比較してみましょう。
- 商品Aの分散: 毎年「5%」で、平均の「5%」と全く同じです。平均とのズレ(差)はゼロなので、分散も「0」になります。価格が全くブレない、国債のような安全資産です。
- 商品Bの分散: 平均の「5%」に対して、1年目は+15%のズレ、2年目は-15%のズレがあります。このズレを2乗して平均を計算すると、分散は「150」という大きな数字になります。
投資の世界では、「分散が大きい商品を買うなら、それに見合うだけの高い平均(リターン)を要求する」のが鉄則です。
なので、今回のようにリターンが同じ場合は、分散の小さい商品Aの方が好まれます。
このように、統計学の知識があれば、魅力的な「平均(リターン)」の裏に隠された「激しいブレ(分散)」を正しく見抜き、騙されないよう身を守ることができます。
「ポートフォリオ」でリスクが下がる
「平均で利益の期待値を測り、分散でリスクを測る」
この2つが分かることで、投資でよく登場する「ポートフォリオ(分散投資)」についてよく理解できるようになります。
「卵は一つのカゴに盛るな」という格言通り、1つの株だけに全財産を投資すると、その会社の業績が悪化したときに一発で資産を失ってしまいます。
しかし、統計学の「共分散(データ同士の連動性)」という知識を使うと、「リターン(平均)を維持したまま、リスク(分散)だけを劇的に下げる」という運用が可能になります。
ここに、それぞれ単体で買うと「リスク(標準偏差)が10%」ある、値動きの激しい2つのハイリスク商品(XとY)があるとします。
- 商品X:景気が良いときに値上がりし、悪いときに値下がりする(例:自動車会社の株)
- 商品Y:景気が悪いときに値上がりし、良いときに値下がりする(例:金や安全資産)
この2つの商品を「半分ずつ(50%ずつ)」持ってポートフォリオを組んだとしましょう。
もし、この2つが「完全に真逆の動き」をする性質を持っていた場合、統計学の計算を用いると、全体の合計リスク(標準偏差)は「10%」から「0%」へと完全に相殺されます。
以下のポートフォリオのシミュレーターの相関係数を上げたり下げたりするとリスクが増減するので、確認してみてください。

相関係数は
・1に近い(正の相関): 片方が増える(減る)と、もう片方も増える(減る)
・0に近い(無相関): 関連性が無いので、お互いにまったく影響を受けない
・−1に近い(負の相関): 片方が増える(減る)と、もう片方が減る(増える)
という関係を表します。
ポートフォリオリスク・シミュレーター
スライダーを動かして、相関係数や投資割合が全体のリスク(ブレ幅)にどう影響するか確認してみましょう。
ポートフォリオ全体のリスク
現実の市場でリスクを完全にゼロにすることは難しいですが、たとえば「値動きの関連性(相関係数)がやや低い」一般的な組み合わせ(株と債券など)であっても、それらを半分ずつ持つだけで全体の期待リターンはそのままで、リスクを10%から「約7%」へと3割もカットすることが可能になります。
このように、統計学の計算は現実の投資において「自分の資産を安全に守りながら育てるための武器」になります。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回は「平均」と「分散」という、統計学の最も基礎的な概念が、金融データや投資行動とどのように結びついているのかを解説しました。
- 平均 = 投資の期待値(リターン)
- 分散(標準偏差) = 投資のブレの大きさ(リスク)
ただ統計学の参考書を読んで問題を解いていると、「こんなことを学んで将来何の役に立つのか?」と感じてしまうこともあるかもしれません。
しかし、今回見てきたように、統計学で学んだ知識は現実社会を生き抜くための強力な武器になります。
データの中心と散らばりを直感的に捉える力は、金融市場だけでなくビジネスの売上予測やマーケティングなど、あらゆる場面で活用されています。
ぜひ、「平均」と「分散」の知識を投資に活かしてみてはいかがでしょうか!






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