ここ数年、ニュースで流れる物価高やインフレの報道を見て、
「今後のキャリア選択に不安を感じている」
という方は多いのではないでしょうか。
特に就活が近づいている学生の場合、
「インフレが続くなら、民間企業の方が給料が高くなる?」
「公務員の給料は固定されているから、物価高についていけないのでは?」
といった「公務員」or「民間就職」の選択に迷う人も多いかもしれません。
結論から言うと、近年日本で発生しているインフレ・物価高時代でも、公務員を目指すメリットは大きいといえます。
今回は、「物価高・インフレ時代に公務員を目指すのは損か?得か?」について、経済学的な視点からわかりやすく解説します!
物価高・インフレ時代に公務員を目指すのは損か?得か?

インフレ(物価上昇)が起こると、日用品や食料品、電気代などの生活コストが上昇しますよね。
また、2020年以降の日本では、
「ベースアップ(ベア)◯%実施!」
「大手企業の初任給が引き上げ!」
とニュースで発表されているのを目にすることが増えています。
これを見ると、
「公務員になるよりも民間企業に就職・転職した方が、物価上昇に合わせてすぐに給料を増やしてもらえるのではないか」
と思う人も多いのではないでしょうか。
確かに、業績が良い一部の民間企業(特に大企業)は、インフレや企業の業績に応じて即座に賃上げを実施しています。
しかし、公務員だからといって「給料が固定されて物価高に置いていかれる」というわけではありません。
公務員の給与にも、経済の変化にしっかり追従する構造的な仕組みが組み込まれています。
公務員の給料が決まる仕組み
民間の給与水準に連動する「人事院勧告」
公務員の給料は、国や自治体が適当に決めているわけではありません。
公務員にはストライキなどの労働基本権が制限されているため、その代償措置として「人事院(地方の場合は人事委員会)」という中立的な機関が給与水準を調査・勧告しています。
具体的には、毎年一定規模以上の民間企業の給与実態を詳細に調査し、
「公務員の給与水準を、民間企業の平均水準に合わせる(官民格差をなくす)」
ことを基本原則として給与改定の勧告を行います。
つまり、公務員の給与は「前年の民間企業の賃上げ動向」のデータをベースに決定される構造になっています。
実際、近年の物価高や深刻な人手不足を背景とした民間企業の歴史的な賃上げ(春闘など)を受け、公務員の給与も明確な上昇傾向にあります。
ここ数年の人事院勧告では、月給(ベースアップ)と特別給(ボーナス)の引き上げが連続して実施されており、直近の改定幅は過去数十年で最大規模の水準となっています。
【経済学の応用】公務員の給料×ラスパイレス指数
公務員の給与について調べていると、各自治体のウェブサイトなどで「ラスパイレス指数」という言葉を目にすることがありますよね。
マクロ経済学の試験科目では「過去の数量を固定して計算する物価指数」として学習するラスパイレス指数ですが、公務員(行政)の世界では
「国家公務員の給与水準を100とした場合の、地方公務員の給与水準を示す指数」
として実務的に使われています。
地方自治体ごとに職員の年齢構成や学歴の割合は異なりますが、それらが「国家公務員と全く同じである」と仮定して計算し直すため、純粋な給与水準の比較ができるのが特徴です。
たとえば、ある市のラスパイレス指数が「102.0」であれば、国家公務員よりも平均して2%ほど給与水準が高いことを意味します。
このように、試験科目として学ぶ「ラスパイレス指数」の知識は、実はキャリア選びの指標としても役に立ちます。
「民間の方が稼げる」とはいえない⁉︎

近年、ニュースでは民間企業の「初任給の大幅アップ」や「過去最高のベースアップ」といった景気の良い話題が報じられていますよね。
これには、物価高(インフレ)への対応だけでなく、日本社会における深刻な「働き手不足(人手不足)」も大きく影響しています。
優秀な人材を確保するために、各企業がこぞって待遇改善に動いているので、
「やっぱり今は、公務員より民間企業に就職した方が稼げるのでは?」
と思ってしまいがちです。
しかし、ニュースで大々的に報じられるような「大幅な賃上げ」を実現できているのは大きな資金力を持つほんの一部の大企業のみで、その他企業(中小企業など)ではそこまで賃上げが行われていません。
そのため、インフレだからといって一概に「民間企業の方が稼げる」とは決していえません。
その具体的な理由を以下で詳しく解説します。
- インフレの種類の問題:「良いインフレ」と「悪いインフレ」
- 賃上げできる大企業と、苦しむ中小企業の格差
- 公務員は倒産のリスクがゼロ
インフレの種類の問題:「良いインフレ」と「悪いインフレ」
民間企業の給料が本当に上がるかどうかを考える上で、経済学の視点から「現在起きているインフレの種類」を見極めることが非常に重要です。
インフレには大きく分けて2つの種類が存在します。
① ディマンドプル・インフレ(良いインフレ)

「ディマンドプル・インフレ」とは、
消費者の「買いたい」という需要(ディマンド)が、供給を上回ることで起きるインフレ
です。
この場合、
「商品の需要が高まり、たくさん売れる → 企業が値上げしても売れる → 企業の利益が増える → 従業員の給料がアップする → さらに消費が増える」
という好循環が生まれ、経済全体が活発になります。
② コストプッシュ・インフレ(悪いインフレ)

一方で、現在の日本を苦しめているのがこちらのインフレです。
「コストプッシュ・インフレ」とは、
需要が増えたわけではなく、円安による輸入品の値上がりや、原油・原材料費、さらには人件費の高騰(コストプッシュ)によって、企業が「やむを得ず値上げをする」状態のインフレ
を指します。
この場合、
- 企業・・・売上が増えたわけではないため利益が圧迫される
- 消費者・・・物価高で生活が苦しくなって買い控えを起こす
という状況になるので、経済は活性化しません。
近年の日本の状況と給与への影響
現在の日本が直面しているのは、典型的な「コストプッシュ・インフレ」といえます。
そのため、
「インフレになったから経済が活性化して、民間企業の給料もどんどん増える」
という良いインフレの状況にはなりにくいと考えられます。
多少給料が上がったとしても、それは「企業が大きな利益を出しているから」というよりも
「物価高で生活できない従業員を引き留めるための防衛策(人材の確保)」
であることが多く、
「給料は上がったけれど、それ以上に物価が高くなって実質的な生活は苦しくなっている(実質賃金の低下)」
という現象が起きやすくなります。
賃上げできる大企業と、苦しむ中小企業の格差

ニュースで大々的に報じられる「大幅な賃上げ」を実施できているのは、主に潤沢な資金力と強い価格転嫁力を持つ「一部の大企業」に限られています。
日本の全企業のうち、99%以上は中小企業であり、働く人の約7割が中小企業に勤めています。
インフレ、特にコストプッシュ・インフレ時において、中小企業は以下のような厳しい状況になってしまいます。
- 原材料費や光熱費などのコストが高騰する。
- 親会社や取引先に値上げを要求できず、コスト増加分を自社でかぶる。
- 利益が圧迫され、従業員の給料を上げる余裕がなくなる。
つまり、「インフレだから民間なら給料が上がる」というのはごく一部の企業の話であり、現実には「物価だけが上がって給料は上がらない」という厳しい局面に立たされる中小企業が多くなっています。
公務員は倒産のリスクがゼロ
近年の日本のインフレは、需要の拡大による「良いインフレ」ではなくコストの増加による「悪いインフレ」であるため、多くの民間企業にとって利益を圧迫する大きな負担となっています。
さらに追い打ちをかけているのが、緊迫する国際情勢です。
「ウクライナとロシアの戦争」や「アメリカとイランの紛争」などにより、原油やさまざまな原材料の価格が世界規模で高騰しています。
その結果、仕入れコストの高騰分を商品やサービスの価格に転嫁しきれない企業の倒産リスクが急激に高まっています。
実際に「物価高倒産」を含め、企業の倒産件数は増加傾向にあるので、民間企業で働く以上は常に「会社の存続」という不安が残ります。
一方で、公務員には「倒産」という概念そのものが存在しません。
国や地方自治体が運営主体であるため、原油価格が高騰しても不景気になっても自分の職場がなくなるリスクはゼロといえます。
近年の日本のように先行きが不透明で変化の激しい状況において、「将来に対する雇用の不安が全くない」という安心感は、公務員ならではのメリットといえます。
| 項目 | 一部の大企業 | 多くの中小企業 | 公務員 |
| インフレ時の賃上げ | 即座に大幅アップ | 困難(据え置き・減給も) | 民間企業に合わせてアップ |
| 業績悪化・倒産リスク | 低い(ゼロではない) | 高い | 完全にゼロ |
| 給与水準の基準 | 自社の業績依存 | 自社の業績依存 | 一定規模以上の民間平均 |
公務員は物価高に強い⁉︎
生活コストを補填する「各種手当」
インフレ期には、給与の額面数字だけでなく「実際に毎月いくら手元に残るか」が重要になります。
その点、公務員は基本給(俸給)以外の手当が非常に手厚く設定されています。
- 住居手当: 賃貸住宅に住む場合、家賃に応じて毎月一定額(最大28,000円程度など)が補助されます。インフレで賃貸更新料や家賃が上がった際にも強い味方となります。
- 地域手当: 物価や地価が高い都市部(東京23区など)に勤務する場合、基本給などに最大20%程度の割増金が加算されます。物価高の地域差に対応する合理的な仕組みです。
- 扶養手当・通勤手当: 家族構成や通勤にかかるコストに応じて支給され、ガソリン代や交通費の高騰時にも実費に合わせて改定されます。
現金の価値が目減りするインフレ時において、こうした
「給料以外の生活費を直接補填してくれる手当」
が充実していることは、家計にとって大きなプラスになります。
退職金や年金などの長期的なインフレ耐性がある
インフレによって物価が上昇すると、銀行に預けている現金の価値は実質的に目減りしてしまいます。
そのため、老後の生活を支える「退職金」や「年金」の制度がどれだけしっかりしているかが、長期的なインフレ耐性を左右します。
その点、公務員の制度は民間企業と比較して非常に強力な基盤を持っています。
① 退職金:インフレが「退職時の給与」に反映される仕組み
公務員の退職金は、法律や条例に基づき「退職日の基本給(俸給月額)」をベースに計算されます。
つまり、インフレに対応して現役時代の給与がベースアップされれば、将来受け取る退職金の算定ベースも自然と底上げされる仕組みになっています。
定年退職の場合、国家公務員・地方公務員ともに約2,000万円規模の退職金が支給されます。
一方で、民間企業(中小企業)の退職金は平均1,000万円前後(これより少ない可能性もある)と大きな差があります。
このように、制度として確約されている公務員の退職金は、将来設計において高い安定性を持ちます。
② 年金:民間にはない独自の「3階建て」構造
現在の公的年金制度において、民間企業の会社員は
「国民年金」+「厚生年金」
の2階建て構造が基本です。
一方、公務員の場合はこれに加えて、公務員独自の職域加算に代わる
「年金払い退職給付」
が上乗せされる、手厚い3階建ての構造になっています。
インフレが進行し生活コストが上昇した際、民間企業で働く人は老後資金の不足分を株式投資や個人の貯蓄などで大きくカバーしなければならないリスクが高まります。
しかし公務員は、この「底上げされる退職金」と「3階建ての年金」という制度に守られているため、長期的な物価上昇に対しても相対的に高いインフレ耐性を備えているといえます。
まとめ
いかがでしたでしょうか!
- 「人事院勧告」の仕組みにより、民間の賃上げに合わせて賃上げが行われる。
- 近年の日本のインフレは「ディマンドプル・インフレ」ではなく「コストプッシュ・インフレ」なので、民間企業は物価高に苦しむ状況にある。
- 倒産・リストラのリスクがゼロでありながら、安定した給料・手当を得られる。
- 手厚い手当制度により、日々の物価高から生活防衛ができる。
近年、「ベースアップ(ベア)◯%実施!」や「大手企業の初任給が引き上げ!」のように景気がいいニュースを目にしていますが、これはインフレというよりも「人材不足」によって資金に余裕がある大企業が優秀な人材を確保するためにこぞって待遇改善に動いていることが大きな原因です。
つまり、インフレ・物価高だからといって民間企業の方が給料が高くなるとは限らず、むしろ物価高の影響が重くのしかかり経営難になる可能性があります。
なので、日本で発生しているインフレ・物価高時代でも、公務員を目指すメリットは大きいといえます。
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