企業の最大の目的は「利益を最大化すること」ですよね。
しかし、ライバル企業との激しい価格競争が起こることで、結果的にお互いの利益を削り合ってしまいます。
そこで企業が選択しがちなのが「競争を避ける」という行動です。
市場が少数の大企業に支配される寡占市場(かせんしじょう)では、企業同士が結託して市場をコントロールしようとする動きが見られます。
その代表例が「カルテル」です。
今回は、ミクロ経済学や公務員試験で頻出となるカルテルの仕組みや発生の理由、さらにトラストやコンツェルンといった他の独占形態との違いについて詳しく解説します!
カルテル(企業連合)とは何か?

カルテルとは、
同業種の複数の企業が、互いの「独立性」を保ったまま、価格や生産量、販路などについて協定(結託)を結ぶ行為
を指します。
本来であればライバル同士であるはずの企業が、
「これ以上値段を下げるのはやめよう(価格カルテル)」
「市場に出回る商品の数を制限して、価格を高止まりさせよう(生産統制カルテル)」
といった約束を交わします。
これにより、参加企業全体で市場を一つの独占企業のように支配して利潤を最大化し、大きな利益(独占利潤)を分け合うことができます。
なぜカルテルは禁止されるのか?

日本では「独占禁止法(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律)」によって、不当な取引制限としてカルテルは原則的に禁止されています。
ただ、先ほどのカルテルの解説を見ると、法律で禁止されるほど悪いことのように感じませんよね。
カルテルが禁止されている理由は、ミクロ経済学の「余剰分析」を用いるとよくわかります。
市場が自由な競争(完全競争市場)に任されていれば、価格は需要と供給が一致する適切な水準に落ち着くので、社会全体の豊かさ(社会的総余剰)は最大になりますよね。
しかし、カルテルによって企業が生産量を意図的に絞り、価格を競争水準よりも高く釣り上げると、以下のような悪影響が生じます。
- 消費者余剰の減少:消費者は本来より高い価格で商品を買わざるを得なくなり、一部の消費者は高すぎて購入を諦めてしまいます。消費者の得られるはずだった利益(消費者余剰)は大きく減少します。
- 死重損失(デッドウェイト・ロス)の発生:企業側は価格を高く設定することで利益(生産者余剰)を増やしますが、社会全体で見ると取引量自体が減ってしまうことで「誰の利益にもならない純損失」が発生します。これを経済学で「死重損失(デッドウェイト・ロス)」と呼びます。
このように、カルテルは、
- 特定の企業だけが儲かる(消費者が不当な損失をしてしまう)
- 市場の効率性を歪めてしまうので、国全体の経済活動に悪影響を及ぼす
ため、規制されています。
どのような市場でカルテルは発生しやすいのか?
カルテルは、少数の大企業が市場の大部分を支配している「寡占市場」において発生しやすいという特徴があります。
では、寡占市場の場合、なぜ企業はわざわざ法律で処罰されるリスクがあるのに協定を結ぼうとするのでしょうか。
それは、寡占市場における「価格競争のジレンマ」が原因です。
少数のライバル同士がシェアを争う寡占市場において、ある企業が単独で価格を変更しようとすると、他社は次のような反応を示します。
・自社が「値上げ」をした場合:

自社が「値上げ」をした場合、基本的に他社は追従しません。
自社だけが値上げをしても、ライバル企業は「今が客を奪うチャンス」と考え、価格を安いまま据え置きます。
結果として、値上げをした自社の客だけがライバルに奪われ、大きな損失をしてしまいます。
・自社が「値下げ」をした場合:

自社が「値下げ」をした場合、基本的に他社も追従します。
自社がシェアを拡大しようと値下げをすると、ライバル企業は「客が価格が安い会社に流れてしまう」と焦って、即座に同じだけ値下げをして対抗してきます。
結果として、客のシェアは各社とも変わらないのに、業界全体の利益だけが全員揃って下がってしまうという最悪の結末を迎えます。
このように、寡占市場においては
「値上げをすれば自社だけが損をし、値下げをすれば全員が共倒れになる(利益が下がる)」
という構造があります。
これを言い換えると、
「協定を結んで価格を固定することで、寡占市場のあるすべての企業が安定した利益を得ることができる」
ことになります。
これが、寡占市場においてカルテルという違法行為が発生してしまう最大の理由です。
独占資本の3形態(カルテル・トラスト・コンツェルン)
企業が競争を制限し、市場を支配しようとする方法はカルテルだけではありません。
試験対策や経済の歴史を学ぶ上で合わせて押さえておきたいのが、「独占の3形態」です。
それぞれの「企業の独立性」と「結びつきの強さ」に注目して、これらの違いを確認してみましょう!
1. カルテル(企業連合)

カルテルとは、
同じ産業に属するライバル企業同士が、無用な価格競争を避けるために裏で手を結ぶ行為
です。
- 特徴: 各企業が「独立性」を保ったまま、価格や生産量に関する協定を結ぶ形態。
- 結合度: 弱い(協定を破棄すれば、すぐに元の競争状態に戻る)。
あくまで「お互いにこのルールを守ろう」という協定にすぎないため、企業ごとの独立性は保たれたままになります。
しかし、市場の価格を高止まりさせ消費者に不利益をもたらすため、日本では独占禁止法によって厳しく禁止されています。
2. トラスト(企業合同)

トラストとは、単なる約束事であるカルテルから一歩進み、
複数の企業が合併や買収(M&A)によって完全に「ひとつの会社」になってしまう形態
です。
- 特徴: 同業種の複数の企業が、合併や買収などを通じて「ひとつの巨大な企業に合体」してしまう形態。企業としての独立性は完全に失われます。
- 結合度: 強い(完全に一体化するため、カルテルのように内部から崩壊するリスクがありません)。独占禁止法では、過度な経済力集中を招く合併も厳しく監視されます。
かつてのライバル同士が完全に合体するため、市場をひとつの巨大企業が独占することになります。
競争を著しく制限するような大規模なトラスト(合併)も、法律によって厳しく規制・監視されています。
3. コンツェルン(企業連携)

コンツェルンとは、
巨大な資金力を持つ持株会社(親会社)が、株式を買い占めることで様々な産業の会社(子会社)を支配下に置く形態
です。
- 特徴: 持株会社などが、金融力を背景に他業種にわたる複数の企業の株式を保有し、「資本の力でグループ全体をピラミッド型に支配」する形態。個々の企業は別々の会社として存在(独立性は形だけある)しますが、実質的な経営権は親会社が握ります。戦前の日本の「財閥」などが代表例です。
- 結合度: 非常に強い(資本で強力に統制されているため)。
カルテルやトラストが主に「同業種」で結びつくのに対し、コンツェルンは金融、鉄鋼、貿易など多岐にわたる産業をグループとしてピラミッド型に支配するのが特徴です。
3形態の比較まとめ
| 形態 | 企業の独立性 | 結びつきの方法 | 目的・特徴 |
| カルテル (企業連合) | あり | 協定(価格・生産量など) | 独立した企業同士が競争を避ける。 |
| トラスト (企業合同) | なし | 合併・買収 | 企業そのものが一つに合体し、市場を直接支配する。 |
| コンツェルン (企業連携) | あり(※資本支配) | 株式の保有(持株会社など) | 巨大な資本力で複数産業をまたいでグループ支配する(財閥など)。 |
まとめ
いかがでしたでしょうか!
- カルテル(企業連合):独立した同業種の企業同士が、価格や生産量の協定を裏で結んで競争を回避する形態。
- トラスト(企業合同):同業種の複数企業が合併や買収によって完全にひとつの会社に合体し、市場を支配する形態。
- コンツェルン(企業連携):持株会社などが強大な資本力を背景に、異なる業種の複数企業を株式保有によってピラミッド型に支配する形態。
カルテルが発生する背景をより深く理解するためには、完全競争市場と独占市場のメカニズムの違いを把握することも重要です。
今回解説した「カルテル」や同じ分野の「独占と競争」の基礎知識は、経済学の資格試験や定期試験でよく登場するので、ぜひ覚えてみてください!
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