- IS曲線
- 投資関数
- 貯蓄関数
- 財市場均衡条件
- 財市場の超過需要
- 財市場の超過供給
- 投資の利子弾力性
IS曲線
IS曲線とは
IS曲線とは、
財市場において総需要(有効需要)と総供給が一致するような利子率と国民所得の組み合わせを表す曲線
のことです。
グラフに描くときは、縦軸に「利子率(r)」、横軸に「国民所得(Y)」をとります。

図のように、IS曲線は右下がりの曲線になり、
- 利子率が低いと、国民所得Yが大きくなる
- 利子率が高いと、国民所得Yが小さくなる
という関係になることがわかります。
名前の由来は、マクロ経済学における財市場の均衡条件である「投資(Investment)=貯蓄(Saving)」の頭文字から来ています。
IS曲線の導出
政府部門のない閉鎖経済を考え、一定の政府支出Gが投資Iに含まれるものとして、財市場均衡条件を
Y = C(Y)+I(r)
とすると、「S(Y)=YーC(Y)」より
I(r)= S(Y)
になります。
この条件のもと、IS曲線の導出に必要な
- 投資関数
- 貯蓄関数
- 財市場均衡条件
を確認しましょう。
投資関数

投資関数I=I(r)は、投資Iが利子率rの減少関数であるので、
- 利子率が高くなるにつれ、投資は小さくなる
- 利子率が低くなるにつれ、投資は大きくなる
という関係になります。
貯蓄関数

消費関数をケインズ型のC=C_0+cYとすれば、貯蓄関数は
S = Y ー C = Y ー(C_0+cY)= ーC_0 +(1ーc)Y
より、
S=ーC_0+sY
になります。(sは限界貯蓄性向)
財市場均衡条件

財市場均衡条件I=Sをグラフで表すと、このような45度線になります。
IS曲線の導出
これらのグラフを
- 投資関数(第2象限):左右反転
- 財市場均衡条件(第3象限):180度回転
- 貯蓄関数(第4象限):上下対称
にして、第1象限にIS曲線を導くと、以下のような図になります。

ただ、いきなりこの図を見せられても、この図が何を表しているのかわかりにくいですよね。
なので、第2象限→第3象限→第4象限→第1象限の順番で確認していきます。
まずは、第2象限→第3象限をみてみましょう。
・第2象限→第3象限

第2象限の投資関数では、利子率が低下すると、投資Iが大きくなります。
そして、第3象限の財市場均衡条件をみてみると、投資関数(第2象限)で投資が大きくなった分、貯蓄Sも大きくなります。(I=S)
①利子率rが小さくなる
↓
②利子率の減少を受けて、投資Iが大きくなる
↓
③投資Iの増加を受けて、貯蓄Sが大きくなる
次に、第3象限→第4象限です。
・第3象限→第4象限

第3象限では、投資Iの増加を受けて貯蓄Sが大きくなりました。
第4象限の貯蓄関数の式は「S=ーC_0+sY」で、左辺にSがあります。
「ーC_0」や「限界貯蓄性向s」は変化しないので、「S=ーC_0+sY」の貯蓄Sが大きくなるということは、国民所得Yが増加するということになります。
①投資Iが増加する
↓
②投資Iの増加を受けて、貯蓄Sが大きくなる
↓
③貯蓄Sの増加を受けて、国民所得Yが増加する
最後に、第4象限→第1象限をみてみましょう。
・第4象限→第1象限

第4象限では貯蓄Sの増加を受けて、国民所得Yが大きくなりました。
第1象限では第4象限の国民所得Yの増加を受けて、そのまま国民所得Yが大きくなります。
①貯蓄Sが増加する
↓
②貯蓄Sの増加を受けて、国民所得Yが大きくなる
このように、第2象限の利子率の低下が、巡り巡って第1象限の国民所得Yの増加につながりました。
つまり、先ほどの象限を使った図は、
- 利子率rが低いと、国民所得Yが大きくなる
- 利子率rが高いと、国民所得Yが小さくなる
のように、IS曲線が右下がりの曲線になることを説明しています。
①利子率rが小さくなる
↓
②利子率の減少を受けて、投資Iが大きくなる
↓
③投資Iの増加を受けて、貯蓄Sが大きくなる
↓
④貯蓄Sの増加を受けて、国民所得Yが増加する
IS曲線の特徴
IS曲線の特徴は以下のようになります。
- IS曲線は右下がりになる
- IS曲線は政府支出など需要の増加によって右に、需要の減少によって左にシフトする
- IS曲線の右上は財市場の超過供給、左下は財市場の超過需要が発生している
- 投資の利子弾力性が大きいほど、IS曲線の傾きは緩やかになる
IS曲線は右下がりになる

先ほど象限の図を使って解説した通り、IS曲線は右下がりになります。
これは、財市場において、国民所得Yと利子率rには
- 利子率rが低いと、国民所得Yが大きくなる
- 利子率rが高いと、国民所得Yが小さくなる
という関係があることを示しています。
IS曲線は政府支出など需要の増加によって右に、需要の減少によって左にシフトする

IS曲線のグラフの線そのものが右や左にシフトすることがあります。
その代表例が、政府が行う「財政政策(政府支出の増加や減税)」です。
・右にシフトするケース(需要の増加)

政府が「公共事業で橋を造ろう!」とお金を使ったり(政府支出の増加)、減税をして国民の買い物を後押ししたりしたとします。
このとき、国民所得Yの式は以下のように変化します。
Y = C(消費↑)+ I +G(政府支出↑)
消費Cや政府支出Gが増加するので、金利が全く下がっていないのに国民所得Yが増加しますよね。
このように、同じ利子率のまま横軸の数字Yだけが増えるため、グラフ全体が「右」へシフトします。
・左にシフトするケース(需要の減少)

逆に、政府が無駄遣いをやめて予算を削ったり、増税をした場合をみていきましょう。
このとき、国民所得Yの式は以下のように変化します。
Y = C(消費↓)+ I +G(政府支出↓)
消費Cや政府支出Gが減少するので、金利が全く上がっていないのに国民所得Yが減少しますよね。
このように、同じ利子率のまま横軸の数字Yだけが減るため、グラフ全体が「左」へシフトします。
IS曲線の右上は財市場の超過供給、左下は財市場の超過需要が発生している
IS曲線の「線の上」は、投資I = 貯蓄Sの状態です。
まずは、IS曲線の右上側をみてみましょう。

グラフを見ると、「IS曲線の右上側=利子率が高い」ことがわかります。
利子率が高くなると企業は金融機関からの借入を控える(返済額が大きくなるため)ので、投資Iが減少します。
つまり、IS曲線の右上側では
- 利子率rが高くなる→投資Iが小さくなる
- 貯蓄Sはそのまま
になるので、「S>I」になります。
この「S>I」の状況は、投資を行っても貯蓄の余剰が生じる状況になるので、財市場の超過供給になります。
次に、IS曲線の左下側をみてみましょう。

グラフを見ると、「IS曲線の左下側=利子率が低い」ことがわかります。
利子率が低くなると企業は金融機関から借入がしやすくなるので、投資Iが増加します。
つまり、IS曲線の左下側では
- 利子率rが低くなる→投資Iが大きくなる
- 貯蓄Sはそのまま
になるので、「S<I」になります。
このS<Iの状況は、貯蓄を行っても投資の余剰が生じる状況になるので、財市場の超過需要が発生することになります。
投資の利子弾力性が大きいほど、IS曲線の傾きは緩やかになる
IS曲線の利子率rと国民所得Yには
- 利子率rが低下すると投資Iは増加する
- 投資Iが増加すると貯蓄Sも増加する
- 貯蓄Sが増加すると、国民所得Yは増加する
という関係があります。
ここでは、利子率rの低下に対して企業が大きく反応して投資Iを増やした場合(=投資の利子弾力性が大きい場合)をみていきましょう。

投資の利子弾力性が大きい場合、利子率rが少し低下するだけで国民所得Yが大きくなります。
その結果、IS曲線の傾きは緩やかになります。(極端ですが、投資の利子弾力性が無限大の場合、IS曲線は水平になります。)

限界貯蓄性向が小さい(限界消費性向が大きい)ときにも、IS曲線の傾きは緩やかになります。
反対に、利子率rの低下に対してあまり反応がなく投資が増えない状態(=投資の利子弾力性が小さい場合)をみてみましょう。

投資の利子弾力性が小さい場合、利子率rが低下しても国民所得Yがそこまで大きくなりません。
その結果、IS曲線の傾きは急になります。(投資の利子弾力性がゼロの場合、利子率が低下しても投資と国民所得は増加しないので、IS曲線の傾きは垂直になります。)
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