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3章 第16回:貨幣市場の均衡〜ケインズ以降の貨幣市場理論〜

マクロ経済学講義3章第16回:貨幣市場の均衡〜ケインズ以降の貨幣市場理論〜 マクロ経済学
この講義の主な論点
  • フリードマンの新貨幣数量説
  • 在庫理論アプローチ
  • 総費用

ケインズ以降の貨幣市場理論

フリードマンの新貨幣数量説

古典派の「貨幣数量説」は、

「世の中のお金の量をいくら増やしても、モノの値段(物価)が上がるだけで、実体経済(生産量や景気)は全く変わらない」

という理論でした。

しかし、ケインズは

「お金の量を増やせば、利子率を通じて実体経済を良くすることができる!」

と主張し、古典派の理論を否定しました。

ケインズの主張
  1. 中央銀行が世の中のお金を増やす
  2. 貨幣市場で「利子率」が下がる
  3. 金利が下がったことで、企業が借金して「設備投資」を増やす
  4. 結果として、実体経済の「国民所得(景気)」が良くなる

ところが、その後古典派の理論を現代風にバージョンアップさせて復活させた人物が現れました。

それが、マネタリスト(貨幣を重視する学派)のフリードマンです。

彼の理論である「新貨幣数量説」は、経済におけるお金の影響を「短期」と「長期」の2つに分けて考えるのが最大の特徴です。

短期的には、財の取引に貨幣が必要であっても、貨幣から得られる利子所得を考慮して貨幣を手放すタイミングを判断するため、流通速度が利子率の影響を受けることになると考えられます。

例えば、利子率が低いと

「受け取る利息が少ないから、危険な債券を持つよりも安全な現金を持っておこう」

のように貨幣の需要が増加します。

新貨幣数量説(短期)の解説画像

その結果、流通速度の式「V=PT/M」の右辺のMが増加するので、流通速度Vは低下します。

一方、長期的には、生産物への支出は必ずなされるため、利子率の影響は消滅すると考えられます。

結果的に、フリードマンの新貨幣数量説では、以下のように短期・長期と区分して考えます。

新貨幣数量説
  • 短期:利子率が流通速度に影響するため、貨幣需要は利子率の減少関数になる
  • 長期:流通速度は一定となり、古典派の貨幣数量説が成立する

ボーモルの在庫理論アプローチ

理論の解説

マクロ経済学の発展理論には、「貨幣の取引需要が利子率に依存する」という理論も存在します。

その一つがボーモル=トービンの在庫理論アプローチです。

取引を行うために預金を引き出すと、預金額が減少しますよね。

つまり、預金から得られる利子が少なくなってしまうので、なるべく少額ずつ繰り返して現金を引き出す方が良いと考えます。

一方で、少額の引き出しを何度も行うと、手数料や銀行に通う費用など、かえって多くの引き出し費用が発生してしまいます。

このとき、両者のトレードオフ関係を勘案して引き出し回数を最適化すると、取引動機に基づく貨幣需要は国民所得の増加関数かつ利子率の減少関数になります。

数理モデル

このトレードオフの関係を、簡単な数式を使って証明してみましょう。

まず、以下のように記号を設定します。

  • Y:一定期間の取引総額(国民所得)
  • r:利子率
  • c:1回あたりの引き出し手数料(銀行に行く手間などの費用)
  • n:最適な引き出し回数

このとき、手元に置いている現金の平均額(これが貨幣需要Lになります)は、引き出し額の半分になるため、以下のようになります。

平均手元現金の式の画像

引き出す人の負担しなければならない「総費用(TC)」は、以下の2つの合計です。

  1. 引き出し費用: 引き出し回数nに手数料cを掛けたもの→nc
  2. 利子の機会費用: 手元に置いている現金(Y/2n)に利子率rを掛けたもの→r×Y/2n

したがって、総費用の数式は以下のようになります。

総費用の式の画像

この総費用TCが「最小」になる引き出し額nを求めるため、この式をnで微分して0になる点を求めます。

総費用をnで微分する画像

これをnについて解くと、最適な引き出し回数は以下のようになります。

最適な引き出し回数nの式の画像

最後に、これを貨幣需要の式(L = Y/2n)に代入すると、最終的な貨幣需要の式が完成します。

最終的な貨幣需要の式の画像

数式を見ると、貨幣需要Lは、

  • 分子にある取引総額Yが増える→Lが大きくなる(国民所得の増加関数)
  • 分母にある利子率rが高くなる→Lが小さくなる(利子率の減少関数)

ことが、数学的に証明されています。

【実戦問題】ボーモル=トービンの在庫理論アプローチ

これまでに学んだ「ボーモル=トービン・モデル」を使って、実際の試験でよく出題される計算問題にチャレンジしてみましょう!

【問題】

カブ君は1ヶ月の生活費として、合計10万円を銀行預金から引き出して全て使い切る予定です。

このとき、以下の条件におけるカブ君の最適な「引き出し回数」を求めましょう。

  • 1ヶ月の総取引額Y: 160,000円
  • 利子率r: 1ヶ月を通じて、平均預金残高に対して2%(0.02)の利子がつく
  • 引き出し費用c: 1回の引き出しにつき100円の手数料がかかる

※ただし、1回あたりの引き出し額は常に一定とします。

この問題のゴールは、カブ君が負担する「①引き出し手数料」と「②機会費用」の合計額(総費用)が最も小さくなる引き出し回数を探すことです。

引き出し回数をn回として、数式を組み立ててみましょう。

① 引き出し手数料の合計

1回100円の手数料がn回かかるので、引き出し手数料は

100 × n = 100n

になります。

② 機会費用の合計

1ヶ月に10万円をn回に分けて引き出すので、1回あたりの引き出し額は160,000/n円です。

手元に置いておく現金の平均残高(貨幣需要)はその半分になるため、80,000/n円となります。

この手元に置いた現金には2%の利息がつかなくなってしまう(損をする)ため、機会費用は以下のように計算できます。

機会費用 = 80,000/n × 0.02 = 1,600/n

③結論

したがって、カブ君が負担する総費用TCの式は以下のようになります。

TC = 100n + 1,600/n

このTCの式をnで微分して=0とおくと

ΔTC/Δn = ー1,600/n^2 + 100 = 0

100 = 1,600/n^2

100n^2 = 1,600

n^2 = 16

n = 4

したがって、正解は「4回」となります!

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