- 新古典派型経済成長理論(ソロー=スワン型)
- ソローの経済成長基本方程式
- 定常状態
- 均斉成長
- 資本蓄積の黄金律
- 拡張されたソロー=スワン・モデル
- 修正された黄金律
新古典派型経済成長理論(ソロー=スワン型)
ハロッド=ドーマー型の「バランスが一度崩れると経済が崩壊してしまう(ナイフ・エッジ)」という極端な結論を克服するために登場したのが、ソローやスワンによる「新古典派型経済成長モデル」です。
新古典派型経済成長理論(ソロー=スワン型)の特徴
ソロー=スワン型モデルの最大の革新は、
要素市場で市場メカニズムが機能することを前提とし、資本と労働の「代替性」を認めた点
にあります。
つまり、労働力が足りなければ機械(資本)で柔軟に代替し、調整が行えると考えました。
この性質を表す代表的な関数として「コブ=ダグラス型生産関数」を想定しています。
また、マクロ全体ではなく「1人当たりの所得y」や「1人当たりの資本(資本装備率:k)」に注目して分析を進めるのがこのモデルの重要なアプローチになります。
ソローの経済成長基本方程式
このモデルでは、1人当たり資本kが時間とともにどう変化するか(Δk)を、以下の「ソロー方程式」で表します。

- k:1人当たり資本
- s:貯蓄率
- y:1人当たり所得
- n:労働人口増加率
この式の右辺は、「貯蓄に回されて新たに増える資本(sy)」から、「人口が増加することで、1人当たりの資本が薄まってしまう分(nk)」を引き算していることを意味します。
これによって、翌期の1人当たり資本がどれだけ増加(または減少)するかが決まります。
この関係を長期的に表すと、以下のようなグラフになります。

k*の点では「Δk=0」になりますが、これを定常状態といいます。
定常状態は、すべての変数の伸び率が一定になる安定的な状態を意味します。
定常状態の性質
先ほどの解説の通り、ソロー方程式において、資本の増加分と減少分が釣り合い、1人当たり資本が変化しなくなった状態(Δk = 0 すなわち sy = nk)を「定常状態」と呼びます。
この定常状態には、以下の3つの重要な性質があります。
自律的な安定性

このグラフは、先ほどの新古典派型成長モデルの横軸を切り取ったものです。
もし1人当たり資本が定常状態より少なければ(sy > nk)、「Δk > 0」となり資本は増加します。
この場合、kは増加することになるので、k*の位置へと近づきます。
反対に、1人当たり資本が定常状態より多ければ(sy < nk)、「Δk < 0」になるので資本は減少します。
この場合、kは減少することになるので、k*の位置へと近づきます。
このように、kはいずれ自律的に定常状態であるk*へと調整されます。(=k*は安定的な状態)
保証成長率と自然成長率の一致
「Δk=0」の安定的な状態では、「sy=nk」が成立します。

経済成長の基本方程式(ソロー方程式)は
Δk = sy ー nk
でしたよね。
この式のΔkに0を代入すると「sy=nk」が導かれます。
sy=nkの式を変形すると

このようになります。
つまり、定常状態では「n = s/v」の形に整理でき、ハロッド=ドーマー型では偶然だった「自然成長率(n)=保証成長率(s/v)」の一致が自動的に達成されます。
均斉成長(斉一的成長)
新古典派型の経済成長モデルでは、定常状態において、労働・資本・国民所得のすべてが、同率(労働人口増加率n)で安定的に成長し続けます。
これを「均斉成長」といいます。

1人当たりの成長率
マクロ全体では均斉成長が達成される定常状態ですが、「1人当たり」で見たときの成長率はどうなるでしょうか。
定常状態では「Δk = 0」となるため、1人当たり資本の成長率はゼロになります。

さらに計算を進めると、1人当たり所得の成長率(Δy/y)もゼロになることが示されます。

つまり、基本的なソロー=スワン型モデルでは、
「長期的(定常状態)には、個人の豊かさ(1人当たり所得)の成長はストップしてしまう」
という結論になります。
資本蓄積の黄金律
定常状態に落ち着くのは良いことですが、人々の目的は資本を増やすことではなく、豊かな「消費」を行うことです。
そこで、定常状態における「1人当たりの消費」が最大になるような理想的な資本水準の条件を「資本蓄積の黄金律(Golden rule)」と呼びます。
まず、一人当たりの消費を

と定義します。
次に、この式を

とします。(S=sY)
この式に、均斉成長条件「sy(k)=nk」を代入すると

になります。
今回の目的は「一人当たりの資本kを求める」ことでしたよね。
なので、この式をkで微分します。


「Δy(k)/Δk」は資本の限界生産性、「n」は労働人口増加率を表しているので、消費を最大化する条件は、以下の公式になります。

これは、
「資本を1単位増やした時に得られる追加的な生産物(MPK)と、人口増加率(n)が一致する水準のとき、1人当たり消費が最も大きくなる」
ことを意味しています。
拡張されたソロー=スワン・モデル
基本的なソロー=スワン型モデルでは、「長期的には1人当たり所得が成長しなくなる」という結果になりました。
しかし、これでは先進国が持続的に豊かになり続けている現実を説明できませんよね。
そこで、より現実的なモデルにするために「技術進歩」と「資本減価償却」の要素を導入して理論を拡張します。
「効率労働」を用いた新たな定義
労働力の質が技術進歩によって高まることを考慮し、「労働量(N)×技術水準(A)」で表される「効率労働(AN)」という新しい単位を導入します。
これを用いて、効率労働1単位当たりの所得(y)と資本(k)を以下のように再定義します。
- y = Y/AN
- k = K/AN
拡張されたソロー方程式の導出プロセス
次に、この新しい1人当たり資本(k)が時間とともにどう変化するか(Δk/k)を計算します。
分数の変化率は「分子の変化率 - 分母の変化率」に分解できる性質を使います。
Δk/k = ΔK/K ー (ΔA/A + ΔN/N)
ここで、それぞれの項に以下の現実的な条件を当てはめていきます。
- ΔA/A = λ (技術進歩率)
- ΔN/N = n (労働人口増加率)
- ΔK = sY ー ΔK(資本の増加分は、貯蓄sYから減価償却による目減り分ΔKを引いたもの)
これらを先ほどの式に代入して整理すると、以下のようになります。

最後に、両辺にkを掛けると、拡張されたソロー方程式が導き出されます。

この式は、「貯蓄(sy)」によって資本が増える一方で、「減価償却(δk)」と「技術進歩・人口増加(λ + n)」によって1人当たりの資本が目減りしていくという綱引きを表しています。
定常状態と「持続的な成長」の証明
このモデルも、時間が経つと「Δk=0」となる定常状態に落ち着きます。

また、定常状態におけるマクロの経済成長率ΔY/Yは、この式の両辺をkで割った

になります。
定常状態では効率労働1単位当たりの所得(y)は成長しなくなります。
しかし、私たちが知りたいのは現実の「労働者1人当たりの所得(Y/NまたはY/L)」がどうなるかです。
労働者1人当たり所得の成長率を計算すると、マクロの成長率(n + λ)から労働人口の成長率(n)を引いたものになります。

計算の結果、労働者1人当たり所得の成長率はゼロではなく「技術進歩率(λ)」に等しい正の値になることが見事に証明されました。
このように、
「技術進歩(イノベーション)が起こり続ける限り、人々の豊かさ(1人当たり所得)はストップすることなく持続的に成長し続ける」
という、現実の経済に即した結論になりました。
(参考)修正された黄金律
この拡張モデルに合わせて、1人当たりの消費を最大化する黄金律の条件も修正されます。
まず、一人当たりの消費を

と定義します。
この式をkで微分すると

このようになります。
つまり、修正された資本蓄積の黄金率は以下のようになります。

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