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5章 第20回:国際マクロ経済学①

マクロ経済学講義5章第20回:国際マクロ経済学① マクロ経済学
この講義の主な論点
  • 国際収支表
  • 外国為替相場(為替レートe)
  • 国際資本移動
  • マクドゥーガル=ケンプ・モデル
  • 国際収支決定要因

国際収支表

国際収支表の画像

国際収支とは、「一国の海外との経済活動の結果として生じる取引の流れ」を表にしたものになります。

通常、国際収支と経常収支の和のことを示しますが、統計上は

経常収支+資本収支+外貨準備増減+誤差脱漏 = 0

が常に成立します。

つまり、国際収支は統計上「0」になるように定義されていることになります。

経常収支

外国為替相場(為替レート)

外国為替相場(為替レート)の式の画像

海外との取引で使用される外国通貨(外貨)と自国通貨(邦貨)の交換比率が為替レートeであり、このような式で表されます。

為替相場制度

為替相場は固定相場制と変動相場制の2種類あります。

固定相場制

政策的に為替レートが固定され、各国の中央銀行がその水準を維持することが求められる制度を固定為替相場制といいます。

かつての日本は固定相場制のもと、1ドル=360円で固定されていました。

固定相場制では通貨の価値が変動しないので安定した貿易を行うことができる一方、国際収支が不均衡になる可能性が高いという問題点がありました。

変動相場制

外貨と邦貨の取引の行われる場である外国為替市場における需給関係によって為替レートが決定される制度を変動為替相場制といいます。

現在、主要先進国間では変動相場為替制が採用されています。

変動相場制では、原則として中央銀行は為替レートに介入する必要はなく、理論的には国際収支は自動的に均衡へと調整されます。

しかし、急激な為替レートの変動が生じた場合などは、為替レートの変動を一定に抑えるために中央銀行が単独で介入or他国の中央銀行と協力して介入することがあります。

これを管理変動相場制といいます。

貿易収支と為替レート

日本円とアメリカドルを例にみていきます。

為替レートeは

為替レート(円・ドル)の画像

になります。

このとき、為替レートeが上昇すると円安になり、反対に為替レートeが下落すると円高になります。

一般的に円安は、日本製品のアメリカ市場における価格(ドル表示)を低下させるため、日本の輸出競争力が強化される一方で、外国製品の日本市場での価格(円表示)を上昇させます。

つまり、円安になると

  • 輸出→増加
  • 輸入→減少

となり、貿易収支が改善します。

反対に、円高では日本製品のアメリカ市場における価格(ドル表示)を上昇させるため、日本の輸出競争力が低下する一方で、外国製品の日本市場での価格(円表示)を低下させます。

つまり、円高になると

  • 輸出→減少
  • 輸入→増加

となり、貿易収支が悪化します。

ここまでの解説より、一般に輸出関数Xと輸入関数Mは

  • X = X_0 + be
  • M = M_0 + mY ー ae

(M0、X0、a、b:正の定数、m:限界輸入性向、e:為替レート)

で表され、純輸出「B=XーM」も、

純輸出の導出の計算式の画像

のように「B=(X_0ーM_0)+(a+b)eーmY」となります。

そして、この式の「(X_0ーM_0)」をB_0、「(a+b)」をcに置き換えると

純輸出の式の画像

となります。

資本収支

国際資本移動

国際的な資本移動が可能な場合、自国と外国の利子率の格差が国際的な資本の流出入を引き起こします。

「利子率が相対的に高いとき、自国へ資本が流入する」の解説画像

外国の利子率水準を「一定である」とするなら、自国の利子率が上昇する(内外利子率格差が正)と自国での資金運用が有利になるために自国への資本流入が起こって資本収支はプラスになります。

「利子率が相対的に低いとき、自国から資本が流出する」の解説画像

逆に、自国の利子率が低下すると内外利子率格差は負になり自国からの流出が起こり、資本収支はマイナスになります。

国際資本移動に全く制約がない完全自由なケースを想定すれば、原則としてわずかな利子率格差が瞬時に利子率の高い国へと資本移動を引き起こします。(このような取引を裁定取引といいます。)

このことより、理論上は均衡状態における利子率は自国と外国で一致することになります。

マクドゥーガル=ケンプ・モデル

国際資本移動について解説しましたが、なぜ資本はわざわざ国境を越えて移動するのでしょうか。

そのメカニズムと、資本移動がもたらすメリットを視覚的に説明するのが「マクドゥーガル=ケンプ・モデル」です。

世界にA国とB国が存在するとして、モデルの解説を行います。

1. 資本移動が起こる前の状態(点K_A)

マクドゥーガル=ケンプ・モデルの解説画像1

グラフの横軸は、世界(A国+B国)の総資本量を表しており、左端(O_A)から右へA国の資本、右端(O_B)から左へB国の資本を測ります。

最初は、資本がA国に偏っている点K_Aの状態を見てみましょう。

  • A国: 資本が豊富にあるため、限界生産性(利子率r_A)は低い水準(点Hの高さ)です。
  • B国: 資本が希少なため、限界生産性(利子率r_B)は高い水準(点Fの高さ)です。

2. より高い利子を求めた資本の移動(K_A → K*)

マクドゥーガル=ケンプ・モデルの解説画像2

資本は、少しでも高い利子(リターン)を求めて移動する性質があります。

そのため、利子率の低いA国から、利子率の高いB国へと資本が流れ込みます。実際の経済において、この国境を越えた資金の移動が「資本収支」として計上されます。

この資本移動は、両国の利子率が等しくなる国際利子率r*(交点E)に達するまで続き、最終的にA国からB国へ「K_A→K*」までの資本が移動します。

3. 資本移動がもたらす両国の利益(三角形の面積)

資本がK*まで移動した結果、マクロ経済には以下の変化が起こり、両国ともに利益(余剰)を得ることができます。

・貸したA国(資本流出国)の利益

マクドゥーガル=ケンプ・モデルの解説画像4

国内での生産量は減りますが、B国へ貸し付けた資本から高い利子を受け取ることができます。

その差し引きの利益は、グラフ上の三角形EGHの面積になります。

・借りたB国(資本流入国)の利益

マクドゥーガル=ケンプ・モデルの解説画像3

A国へ利子を支払う必要がありますが、流入した資本を活用してそれ以上の生産額を生み出すことができます。

その差し引きの利益は、グラフ上の三角形EFGの面積になります。

このように、マクドゥーガル=ケンプ・モデルは、

「資本収支における活発な資本移動が単なるお金の移動ではなく、世界全体の生産量を拡大させ(三角形EFHの増加)、貸す側と借りる側の両国に利益をもたらす」

という重要な意味を持っていることを証明しています。

国際収支決定要因

国際収支は「経常収支」と「資本収支」から構成されます。

そして、経常収支を決定づける大きな要因である貿易収支は国民所得の影響のほかに、為替レートの影響も受けます。

また、資本収支は内外利子率格差の影響を受けることになります。

ここで、

  • 国際収支:BP
  • 経常収支:B
  • 資本収支:F
  • 国民所得:Y
  • 為替レート:e
  • 自国利子率:r
  • 国際(外国)利子率:r*

とすると、

国際収支決定要因の式の画像

となり、ここから以下のことがわかります。

  • 国際所得Yの増加は、輸入増加によって経常収支と国際収支を悪化させる
  • 為替レートeの上昇(減価)は、輸出増加と輸入減少によって経常収支を改善させ、国際収支を改善する
  • 自国利子率rの上昇は、資本流入によって資本収支を改善し、国際収支を改善する

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