- 経済成長率
- 成長会計
- ソロー残差
- ハロッド中立型技術進歩
- ソロー中立型技術進歩
- ヒックス中立型技術進歩
- 6つの定型化された事実(カルドア)
経済成長理論
前回学習した景気循環は「短期的な経済の波」でした。
それに対して、数十年単位で国全体の経済規模(国民所得など)がどのように拡大していくのかを分析するのが「経済成長理論」です。
成長会計
経済が成長する要因は、マクロ的に見ると主に「資本の増加」「労働の増加」「技術進歩」の3つに分解して考えることができます。
この成長の要因を分解して計算する手法を「成長会計」と呼び、以下の公式で表されます。

これを数式で表したものが以下の公式です。


マクロ経済学でよく用いられる「コブ=ダグラス型生産関数」をベースに、各要素の「変化率(どれくらい成長したか)」を足し合わせる形に変形(対数微分など)することで導出します。
一見複雑に見えますが、この公式の各項は単純に以下の足し算を意味しています。
- ΔY/Y:経済成長率(国民所得がどれだけ増えたか)
- ΔA/A:技術進歩率(全要素生産性の上昇率)
- (1ーα)ΔK/K:資本寄与度(機械などの増加率ΔK/Kに、資本への分配率1ーαを掛けたもの)
- αΔN/N:労働寄与度(労働力の増加率ΔN/Nに、労働者への分配率αを掛けたもの)
つまり、
「経済全体が成長した割合は、技術が進歩した割合と、機械が増えた影響分、人が増えた影響分をすべて足し合わせたものになる」
ということを表しています。
全要素生産性と「ソロー残差」
現実のデータを用いて経済成長率ΔY/Yを計算すると、資本の増加分と労働の増加分だけでは説明しきれない、プラスの「残り(残差)」が発生します。
経済学者のソローが発見したこの差を「ソロー残差」といいます。
上記の公式をについて整理(移項)すると、この残差が浮かび上がります。

経済学において、この資本と労働の増加では説明できない部分は「全要素生産性の上昇率」に当たり、これを「技術進歩率」であると解釈しています。
「技術進歩」の3つの分類
技術進歩は経済成長に重要な役割を果たしますが、どの生産要素の生産性を向上させるかによって、代表的な3つのタイプに分類されます。
- ハロッド中立型技術進歩
- ソロー中立型技術進歩
- ヒックス中立型技術進歩
ハロッド中立型技術進歩
ハロッド中立型技術進歩とは、
「資本の限界生産性(資本の効率)を一定に保ちつつ、労働の限界生産性を増加させる(Y/Kが一定)ような技術進歩」
のことです。
少ない労働力でこれまでと同じ水準の生産が可能になるため、「労働増大型技術進歩」とも呼ばれます。
このケースでは、実質資本レンタル価格が一定に保たれれば、労働者と資本家への所得分配の割合(所得分配率)も一定となります。
つまり、技術進歩の恩恵が所得分配に対して「中立的」に働くという特徴を持っています。
ソロー中立型技術進歩
ソロー中立型技術進歩とは、ハロッド型とは逆に、
「労働の限界生産性を一定に保ったまま、資本の限界生産性を増加させる(Y/Kが一定)ような技術進歩」
となります。
既存の機械や設備の性能が向上し、より少ない資本で大きな生産効果を生み出せるようになるため、「資本増大型技術進歩」とも呼ばれます。
このモデルでは、労働者の実質賃金率が一定であれば、経済全体の所得分配率に変化をもたらしません。
資本の効率が上がっても、労働者と資本家の取り分(分配の比率)には影響を与えないという意味で中立とされます。
ヒックス中立型技術進歩
ヒックス中立型技術進歩とは
「資本と労働、両方の限界生産性を同率で増加させる(K/Lが一定)ような技術進歩」
を指します。
どちらか一方の生産要素に偏ることなく、生産システム全体の効率が均等に底上げされるため、「産出増大型技術進歩」と呼ばれます。
実質賃金率と実質資本レンタル価格がそれぞれの限界生産性と同じ割合で上昇していけば、所得分配率は一定に保たれます。
なお、マクロ経済学で頻繁に用いられる「コブ=ダグラス型生産関数」を前提とした場合、数式の変形によってこれら3つの技術進歩の型はすべて一致することが知られています。
経済成長理論の発展プロセス
現実の経済成長の仕組みを解明するため、経済学では時代とともに様々な成長モデルが議論されてきました。
経済学者カルドアは、先進国の経済成長から
- 国民総生産Y、労働生産性Y/Nは、ほぼ定常的に成長している。
- 資本労働比率K/Nは、ほぼ定常的に成長している。
- 利潤率はほぼ一定を保っている。
- 資本産出比率K/Yは、ほぼ一定の値を保っている。
- 投資比率I/Yと利潤の分配比率rK/Yの間には正の相関がある。
- 国民総生産、
- 労働生産性は各国で大きなばらつきがある。
を指摘しました。(「6つの定型化された事実」)
この事実をいかに論理的に説明するかという試みから、以下のようないくつかの代表的な理論が展開されていくことになります。
- ハロッド=ドーマー型経済成長理論:資本と労働が代替できない(機械の代わりに人を増やす、といった調整ができない)と仮定する初期の厳しいモデル。
- 新古典派型経済成長理論(ソロー=スワン型モデル):ハロッド=ドーマー型の弱点を克服し、資本と労働の柔軟な代替を認めることで、経済が自律的に安定成長に向かうとしたモデル。
- 内生的経済成長理論:それまでモデルの外部から与えられる偶然の産物とされていた「技術進歩」を、研究開発(R&D)投資などの経済活動の結果としてモデル内部で決定されるもの(内生変数)として扱う、より現代的なモデル(AKモデルやローマーのモデルなど)。
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